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認知症の方の世界観についてpart②

認知症の方の世界観について

今回は前回の「認知症の方の世界観part①」で得た情報をもとに考えた対応策を実際に他の職員の方に実践してもらった結果をお伝えします。

青い文字をクリックするとpart①に飛びます)

10年前の報告書からの抜粋なのでツッコミどころ満載ですがお許しください。

職員の方には事前アンケートを実施しました。

内容は以下の通りです。

目的:Kさん、Sさんに対して職員がどのように関わっているかを知る

設問1・K様とS様(以下お二人)が他の利用者の方とトラブルになった際どのように関わっていますか?

回答例

・間に入って話を聞き、それでも解決できないなら離れていただく。

・2人と他の利用者との距離を置くように他の方をデイルームに案内する。

・しばらく時間を置いてから気分が変わるような声かけをする。

・Kさん、Sさんに合わせた内容の声かけをする。(ex容姿を褒めたり、共感しお礼を言う事で気持ちを受け止める)

・大きな声で怒っている時は「まぁまぁ」とわざとらしく職員も大きな声でおどけるような顔を作り笑いながら話をそらすようにする。

・何が理由でトラブルになっているのかを尋ねる。

・両方の意見を否定せずに話を合わせるような声かけをする。

・話をよく聞き共感したあとで話をすすめる。

・温かい甘い飲み物やちょっとしたお菓子を提供して落ち着いていただく。

・穏やかな利用者と話をしていただく。

・話題を変えても気分が落ち着かない時は歌を歌ってみる。

・周りに人がいなければ大声を出してもしばらくは話をしてもらっていたり、時間を置きその時間が過ぎるのをまつ。

 

設問2・お二人と他の利用者がトラブルにならないように未然に何か対応をとっていますか?

回答例

・Kさん、Sさんが苦手と思われる方はあまり近くにいてもらわないようにする。

・昼食後食堂で待っていただくと他者に対して杖で叩いたりされるので早目にフロアー(居室のある階)へ案内する。

・Kさんが立腹している時にSさんが近くにいると二人で盛り上がるので離れて過ごしていただく。

・過ごしていただく場所を予めトラブルになりにくい場所にする。

・二人が近づいていくような場面をみかけたらさりげなく一方を別の方へ案内する。

・職員が他の利用者の気を引き付けて距離をとるようにする。

・二人の前を通るたびに声をかける。

・Kさんは世話好きな方なのでトラブルになった相手でも忘れてしまうと「こっちへいらっしゃい」と言葉を掛けるときもあるので気分の状態をみて声をかける。

・気分が良くなるような声かけをする。

・近くにいる時は職員が側につくようにする。(食堂への待ち時間等)

・やや険悪な空気になってきたら職員が間に入る。

・Sさんが不穏な時は正面からではなく、横に座ったりして様子を伺いながら話を聞く。

・二人の好きなこと、話題等を提供し居心地のよい状態ができるようにする。

アンケートのまとめ

・設問1,2ともにKさん、Sさんと他の利用者との距離をあけて対応している意見が多かった。

・設問1に関して、単に話題を変え話をそらすだけでなく職員のしぐさや表情で気持ちごと変えていくという面白い意見があった。

・おやつを提供することで空腹感からみられる不穏に対応している意見があった。

・歌で気持ちをそらすのも有効。

・設問2に関して二人のそばを通るときにはなるべく目を合わせ声をかける等して、職員が二人のことを気にしている事をアピールすることで不穏にならないようにしている意見があった。

 

実践

実習で明らかになった事柄をもとに対応策を他職員と共に実施してもらう

・アセスメントからアンケートまでを総合した結果、課題の解決には以下の点がポイントになると考える。

①午後のおやつ後から不穏になる様子が伺える。

②不穏になると空腹感や帰宅欲求等がみられ他の利用者との関係が悪くなる。

③不穏になる前に何か手が打てないか?

午後のおやつ後にフロアーで二人が孤立しない工夫。(その時の状況に合わせて対応する)

対応策

例:歌のファイルを渡す。居室で休んでもらう。職員が積極的に二人の間に入り話をすることで安心してもらう。

他の利用者をケアしながらも二人を気にかける気配り(職員も利用者からすれば環境の一部であるという意識を持つ)

対応策

例:二人が一緒にいる時に近くを通る際は声をかけ様子をみる。話をする時は笑顔で、時には大げさな表情やアクションで楽しい気持ちになれるように心がける。

実際にフロアーの職員に上記の対応策を意識して業務に入ってもらった

結果(午後2時より)

Kさん

①デイルームでおやつを食べた後、歌のファイルを渡し他の利用者と歌を歌って過ごされる。※職員はずっとついていることは出来ないので時々様子を見ながら対応する。

②歌は30分程で終了し、しばらく昔の生活のDVDを見ながら話をする。

③もう一度歌のファイルを渡し歌ってくれるもすぐに終了。(15:00)

④「疲れたから家に帰って横になる」と言われたので居室へ案内し横になられる。(15:15)

⑤16:30頃起きてこられ、お茶を1杯飲まれる。

⑥その後も不穏な様子はみられなかった。

Sさん

①「今日は調子が良くない」とのことで居室へ案内し休んでいただく。(14:00)

②15:00頃起きてこられ、おやつを食べられ再度横になられる。

③すぐに起きてこられるも表情は穏やかで他の利用者とも笑顔で話をされる。

④その後も不穏な様子はみられなかった。

対応した職員の感想

・対応策を実行できるのがベストだが、他の利用者のケアもあるので業務の時間を気にしてしまう。

・利用者を孤立させないよう目配り、気配り、言葉かけの大切さを再確認した。

・Kさん、Sさんともに落ち着いていたように思える。

まとめ

・対応策を実施した結果、今回はおやつ後の時間を穏やかに過ごしてもらう事ができた。

今回の対応が全てではないので、その時々の状況にあわせた対応が必要になってくる。

利用者を孤立させない気配り、目配り、利用者が楽しく安心して過ごせる雰囲気作りが大切だと感じた。

以上が実際の報告書から抜粋した内容です。

最期に

この実習を通して「認知症の方の世界観を知る」という事の大切さだけでなく、いわゆる「臨機応変に対応する」事の意味を学びました。

介護現場では利用者さん同士のトラブルが時々あります。

私個人としては利用者さん同士のトラブルの対応は苦手でした。できれば自分が担当したその日は何事もなく穏やかに過ごしてほしいと思っていました。

どうしても自立度の高い利用者さんや自分の気持ちを上手く表現できない方(おとなしい方等)は介入する頻度が低くなってしまいます。

しかし、そのせいで実は孤立してしまいさみしい気持ちや不安な気持ちで過ごしていたのだなとこの実習で学びました。

何度も利用者さんの前を通り過ぎていたのに目も合わせず、淡々と業務をこなしていた自分がいました。

1分でも2分でもいいから隣に座って話をする。前を通り過ぎる時ににこやかに声をかける。

それだけでも全然違うと思います。

介護の現場は時間に追われそんな時間はとれないです!」と言われるのは十分に承知しています。(私もスピード重視の時代がありました)

でも、その1分でその後の利用者さんの様子が穏やかになり、介助者にも心の余裕が生まれるのなら必要な時間なのではないでしょうか。

長時間の離床が困難な方は適宜臥床時間を設けてみえると思います。

しかし、「この利用者さんは起きてられるよね」とか「いつも起きて過ごしているからおやつの後に横にはならないよね」と、

決めつけてしまってはいないでしょうか。

人間は1日として同じ日はありません。

認知症の方は特に世界観の移り変わりが激しい方もみえます。

臨機応変な対応」とは決めつけではなく「その人の今」にそった対応なのだと思います。

臥床介助をしても短時間で起きられ事もあるでしょう。

でもご本人はスッキリしているかもしれません。

認知症ケアは「試行錯誤の連続」とpart①でお伝えしました。

対応策が上手くいってもいかなくてもどちらの結果も今後の対応のデータとなるので無駄ではありません。

失敗しても「そう言う事もあるよね

位の気持ちで色々とチャレンジする事の楽しさを見つける事ができると介護が楽しくなりますよ。

理想ばかりのきれいごとでしょ!

と思われる方もいるかもしれません。

確かに「理想」かもしれません。

でも、「理想」を持たなければ質のいいケアを提供する事は出来ません。

現場に出たら「プロの介護職」です。

出来るか出来ないかではなく

やるかやらないか

ではないでしょうか。

まずは先輩職員さんがその姿勢をみせてあげてください。

そうすれば新人職員さんもその姿勢から学んでくれると思います。

何かご相談があれば「介護カウンセリング」を活用してください。

 

 

ここまで読んで頂いてありがとうございました。

認知症の方の世界観part①」はこちらをどうぞ!

次回もお楽しみに!

 

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