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認知症の記憶障害に関する法則

認知症の人の心がわかる本

今回から題にもあるように「認知症の人の心がわかる本」から介護とケアに役立つ実例集などをご紹介していきます。

下記のリンクから購入もできますのでよかったらどうぞ。

知れば介護が楽になる「認知症をよく理解するための9台法則・1原則

新しいことや経験は忘れても過去の記憶は残るー第❶法則 記憶障害に関する法則

記憶障害は、認知症の症状の中で最も基本的なもので、すべての人に例外なく起こります。

記憶が障害されるために、認知症の人には様々な症状があらわれることになるのですが、この記憶障害には次の3つの特徴があります。

①新しいことが覚えられない「記銘力の低下」(ひどいもの忘れ)

私たちの記憶は、新しい経験を覚える「記銘力」、覚えたことをなんらかの形で保存していく「把持(はじ)」、

覚えたことを再生する「想起」の3つの要素に分けられますが、認知症では特に「記銘力」が衰えます。

つまり新しいことが覚えられないのです。

具体的には、「今日は何曜日?」と認知症の人から聞かれ、それに答えた5分後にまた「何曜日?」尋ねられる、

といったことが起こります。

認知症の人は、話したことも見たことも行ったことも直後には忘れてしまうほどのひどい「もの忘れ

になっていることを、介護者はまずよく理解する必要があります。

認知症の人は同じことを何十回、何百回と繰り返しますが、これはそのつど忘れてしまい、

はじめてのつもりで相手に働きかけているからです。

どんなにていねいに説明し、本人が「わかりました」と言っても安心できません。

また同じことを繰り返します。「わかりました」と言った瞬間に、教えてもらったことを忘れてしまうからです。

ですから、認知症の人に対して「何度言ったらわかるの」としかっても意味はありません。

しかられても、認知症の人にすれば、記憶にないことでしかられているわけですから、

しかられた」という感情だけが残ってしまいます。

そうすると、介護者に対して

「私に八つ当たりしたり怒ったりして、いやな人だ。うるさい人だ」

悪感情をいだくよになります。

このような感情のたかぶりは、認知症の症状をさらに悪化させることにもなりますので、注意が必要です。

記憶になければ、そのひとにとっては事実ではない

ということを介護者は知らなければなりません。まわりの者にとっては真実であっても、

当人には記憶障害のために真実ではないのが、認知症の世界では日常的であることを知っておくことは大切です。

対応のポイント

たしかに、同じことを何回も何十回も繰り返されると、イライラしたり、わずらわしいと思うこともあるでしょう。

また、「こう言ってわからないのなら、次はこう答えてみよう」と別の方法を考えて試してみても、

そのネタもいつかは尽き、疲れ果ててしまいます。

しかし、認知症の人は何度言われてもそのつど忘れてしまうわけですから、何度でも同じ答えでよいのです。

やさしく繰り返してあげれば、そのうちおさまるでしょう。

もの忘れは認知症の特徴のひとつと割り切りましょう。

くれぐれも、お年寄りに悪感情をいだかせないような対応をすることが大切です。

②経験そのものを忘れる「全体記憶の障害」

これは、「できごとの全体をまるごと忘れてしまう」ことです。

私たちの記憶力は、健常な人の場合でも不確かなもので、こまかなことはけっこう忘れてしまうものです。

たとえば、昨日の夕食に何を食べたか、メニューの詳細を覚えている人は少ないでしょう。

しかし、食事をしたかどうかを忘れることはないはずです。

ところが認知症の場合は、食事をしたこと自体を忘れてしまうのが特徴です。

ですから、たったいま食べたばかりなのに、「まだ食べていない」と言って家族を困らせることがよく起こります。

経験したことの全体をまるごと忘れてしまうので「全体記憶の障害」といいます。

対応のポイント

デイサービスに出かけたお年寄りが、ほかの人たちとうまくやっているか心配で、家族がちょっとのぞいてみる、

といったケースを考えてみましょう。

お年寄りは、いかにも楽しそうに歌をうたったり、ゲームをしているので、家族も一安心。

帰ってきたお年寄りに、「今日はどうだった」と聞いてみたとします。

ところが、認知症がある程度進んだお年寄りは、

今日はどこにも行っていない。ずっと家にいた

とまじめな顔をして答えるのです。

歌をうたったり、ゲームをしたことなど、いくら思い出してもらおうとしてもだめです。

デイサービスに参加したこと自体をきれいさっぱり忘れているからです。

こんなときは無理に思い出させようとせず、

覚えていなくても、半日楽しく過ごせたのだから、それでよしとしよう

というふうに割り切ることで、家族のほうも混乱せずにすみます。

認知症の人には、最初から新しいことを覚えてもらおうといった期待はかけないほうがよいです。

③過去の記憶の中で生きる「記憶の逆行性喪失」

認知症の人には、蓄積されてきたこれまでの記憶が、現在から過去へとさかのぼって失われていくという現象が見られます。

これを「記憶の逆行性喪失」といいます。

つまり、「その人にとっての現在」は、最後に残った記憶の時点となります。

この特徴を知っていると、認知症の人のおかれている世界を把握することができ、どう対処すればよいかがわかってきます。

具体的には、現在を起点として、数年分、数十年分の記憶をごっそり忘れてしまう、

といったことが起こるのです。

ですから、70歳のお年寄りに年齢を尋ねると、「40歳」とか「18歳」とか、

本人の実年齢とはおよそかけ離れた答えが返ってきたりします。

40歳と答えたお年寄りは、40歳から現在までの記憶が消えてしまって、まだ残されている

40歳のころの古い記憶の中で生活しているのです。

認知症の人は、症状が進むにつれ、若い時代に経験した世界にさかのぼり、そこで暮らすようになるのです。

この「記憶の逆行性喪失」によって認知症のさまざまな症状が説明できます。

・とっくに退職しているのに、朝になると会社に行くといって背広を着て出かけようとする。

・夕方になるとそわそわと荷物をまとめ、昔住んでいた自分の家に帰ろうとする(夕暮れ症候群

・自分の子どもはまだ小さいと思っているので、目の前にいる大人の息子は、父親あるいは兄弟だという。

・自分はまだ18歳なので、結婚前の旧姓を呼ばれなければ返事をしない。

こういった行動も、お年寄りのおかれている世界を介護者が知れば、対応のしかたもわかってくるでしょう。

対応のポイント

認知症の人は、現在の世界を認めようとしません。なんとか説得しようとする周囲の人を、

自分をペテンにかけようとする敵とみなす場合もあります。

ですから介護をする家族も、認知症の人が住む心の世界に行って、その世界をいっしょに楽しむくらいの余裕をもったほうがいいのです。

家族に中には、お年寄りを「おじいちゃん」「おばあちゃん」ではなく

〇〇さん」「△△ちゃん」と呼んでいる場合があります。

はじめからそう呼んでいたわけではなく、認知症の人とコミュニケーションをとる工夫をするうち、

昔の名前で呼びかけるようになったのでしょう。

介護がうまくいっている家庭には、このような対応をしているケースがよくあります。

夕方になるとそわそわと落ち着かなくなり、家をでようとする

夕暮れ症候群」の場合には、

 

いくら「ここがあなたの家ですよ」と説明しても通じません。

その場合には本人の気持ちをいったん受け入れて、

「お茶を入れましたから飲んでいってください」

「せっかく夕食を用意しましたからたべていってください」とか、

「それでは途中までお送りします」

など、いろいろな対応の工夫をしましょう。

いっしょに家の周囲を歩いて帰ってくると、おさまっている場合も多いものです。

介護
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